産業医面談って聞いたことはあるけど、どんなことを話すんだろう?産業医面談の目的って?そうした疑問をお持ちではありませんか?こちらの記事では、産業医面談の目的の他、産業医と社員・人事との連携の方法、強制力や会社側の対応の仕方など簡単に解説していきます!
やっても意味がない?産業医面談の目的について解説!
近年、職場でメンタル不調に陥ってしまう労働者は増加傾向にあります。みなさまの企業や職場にも、身近にそうした方はいらっしゃいませんか?こうした背景から、産業医面談の重要性は高まってきています。
ここから、産業医面談について説明していきますが、そもそも産業医ってどんな職業なんだろう、何をしているの?といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。まずは産業医について簡単に説明していきます!
産業医とは、労働者が職場で健康に働けるように、医学の専門的立場から指示や指導を行う医師のことを指します。一般的な医師とは違い、病気の診断や治療といった医療行為を行わないのが特徴です。
また産業医は、労働者と企業側の中立的な立場に立っていることも特徴です。患者を治す、という一般的な医師とは異なり、労働者の健康も護りつつ、企業側にも不利益が生じないように、医学の専門的視点から助言や指導を行います。
詳しくは「産業医とは」の記事もご覧ください!
その専門的視点からの助言や指導を行う場の一つに、今回のテーマでもある産業医面談があります。ここからは、産業医面談って意味が無いという噂もあるけど実際どうなの?どんな目的で行われるの?という疑問にお答えしていきます!
産業医面談は、企業側の安全配慮義務の一環として行われます。従業員が安全で健康に働くことができるように、心と体の健康面の確認を行うために産業医面談は実施されます。
産業医面談の目的は、過労やストレスによる脳・心疾患やメンタルヘルス不調の未然予防であり、労働安全衛生法では長時間労働者と高ストレス者に行うもの、と定められています。
また、長時間労働者とは、ひと月の時間外・休日労働が80時間を超えている者、高ストレス者とは、ストレスチェックの結果で高ストレス判定となった者、がそれぞれ該当します。
また、面談を実施した従業員本人への保健指導だけでなく、必要に応じて企業側へ就業措置の提案などをすることも目的の一つです。就業措置の例としては、労働時間の短縮や部署の配置換え、労働環境の整備などがあります。
産業医面談を通して、産業医が専門的視点から従業員の健康に影響を及ぼす要因を特定し、会社側へ提案をすることはとても重要であり、産業医面談の重要な意義の一つと言えます。詳しくは「産業医面談は義務で強制力はあるの?」の記事もご参照ください!
ここまで、産業医とは何かということ、産業医面談の目的について説明してきました。では実際に、産業医面談はいつどこで実施して、どんな内容を話すのでしょうか?ここから詳しく説明していきたいと思います。
産業医面談はいつどこで実施して、どんな内容を話すの?
ここまで、産業医面談の目的や産業医についての簡単な説明をしてきました。ここからは、産業医面談について、いつどこで実施されて、どんな事を話すのか、以下4つの場面に分けてそれぞれ説明をしていきます。
①健康診断後
企業では、安全配慮義務の一環として、雇入時や定期的に健康診断を実施することが義務づけられています。また事業主は、異常所見が診断された労働者に対する就業措置について、3ヶ月以内に医師の意見を聴く義務があります。
健康診断の結果は、異常なし、異常所見あり、要観察、要医療などの診断が付いて返ってきます。異常所見ありの場合に産業医面談にて保健指導をすることはもちろん、要観察などの場合の対応も重要です。
要観察、要医療など、受診勧告となっても、従業員によっては時間が無いなどの理由で医療機関を受診しないケースがあります。こうした場合、産業医面談が気軽な相談の場となり、医療機関への受診のハードルが下がることもあります。
また、嘱託産業医を選任している職場など、産業医面談で対応できるケースや時間に限りがある場合は、産業保健師などによる面談や保健指導の場を設定し、健康障害の未然予防に繋げることも可能です。
②ストレスチェック後
ストレスチェックは、労働者個々人のメンタルヘルスのセルフケア促進のために行われます。ストレスチェックの受診自体を通して、また個人宛の結果の通知から、メンタルヘルスへの気づきを促すために行われます。
このストレスチェックの結果、高ストレス者と判定された場合など、医師による面接指導が必要となった場合、従業員が産業医面談を希望することで産業医面談が行われます。
面談内では、労働時間や労働時間以外のストレス要因についてや、心理的負担の状況や心身の健康状態、睡眠時間などの生活状況などについて話されます。
③長時間労働になった場合
こちらは、「時間外・休日労働時間が1ヶ月あたり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる者」を対象として行われます。
面談内では、労働時間や疲労の蓄積の状況についての確認、心身の健康状態などについて話されます。
④復職を始める時
休職していた従業員が復職を始める時にも、産業医面談は行われます。
面談で主に話される内容は、就業に対する意欲の有無や現在の生活状況などについてで、従業員が安全に復職できる状況にあるか産業医が判断するために行われます。
こうした内容について産業医と面談を行い、産業医から企業側へ必要な就業措置を指導・助言する流れになります。また就業措置とは、例えば労働時間の短縮や職場での配置換え、職場の環境整備などを指します。
面談場所に指定はありませんが、企業内の健康管理室の一室など、プライバシーが護られる場所で実施されることが多いです。また、基本的には産業医と面談対象の労働者とが1対1で行われています。
ここまで、産業医面談が実際にいつどこで、どのように実施されて何を話すかを説明してきました。次は、社員と人事労務、産業医がどのように連携していくのかを説明します。
社員と人事労務、産業医はどのように連携するのか
ここまで、産業医面談がどのような場合に実施され、どんなことが話されるのか、などを解説してきました。ここからは産業医面談を行うに当たって、社員と人事労務担当者、産業医の三者がどのように連携するのかについて説明します!
①社員
社員は、産業医面談を行うに当たって、産業医面談の希望をストレスチェックの実施者などに申し出たり、面談時に産業医へ健康相談をしたり、就業上の措置について希望を述べたりします。
また、健康診断後や復職時の産業医面談の際には、専門の医療機関での主治医の治療方針などについて、当事者として必要に応じて産業医などに情報提供をすることが望まれます。
②人事労務担当者
産業医面談において、人事労務担当者は産業医から就業措置について指導・助言を受け、社員の労働環境を整えるなど、橋渡し的な役割を担います。
このとき、人事労務担当者は、産業医面談について得た情報を慎重に扱わなければなりません。従業員がより健康に働くことができるように、また不当な処遇となってしまわないように、社員へ配慮することが重要です。
また、人事労務担当者は産業医から各面談の個別の情報だけで無く、産業医面談全体を通して職場に共通する課題点や改善点について意見を仰ぎ、職場全体の労働環境の改善に繋げることも期待されています。
③産業医
産業医は、ここまで説明してきたように社員に対して保健指導をするほか、人事労務担当者へ、必要に応じて就業上の措置について指導・助言をします。
そのほかにも、例えば復職時面談などにおいては、対象となる従業員の主治医とも連携をし、疾患に関するより専門的な情報を得て、就業上の措置について方策を検討することもあります。
ここまで、社員と人事労務、産業医の連携について簡単に説明してきました。ここからは、産業医面談について、強制力はあるのか?拒否はできるの?といった疑問にお答えしていきたいと思います。
産業医面談は義務で強制力がある?拒否はできるの?
産業医面談には、法的な強制力はありません。あくまでも、「労働者本人による申し出」があった場合にのみ行われるものだからです。また、本人の希望無く、産業医面談を受けさせることも出来ません。
ただ実際には、産業医面談を受けたいけれど時間に余裕が無い、産業医面談を受けたことが会社側に知られるのが怖い、産業医面談の内容が人事評価に繋がってしまうのではないだろうか、という不安を感じる労働者もいます。
そうした不安から従業員が産業医面談を受けず、万が一、労災が発生してしまった場合、企業側の責任が問われる可能性もあります。
そのようなケースを避けるためにも、効果的な産業医面談の実施が重要であることがお分かりいただけるかと思います。企業側は、例えば産業医面談は従業員の健康のために実施するものだと強調して周知するなど、工夫が重要になります。
また、面談内容について、本人の同意無く企業側に知られることは無いことや、人事評価に影響を及ぼすものでないこともしっかり周知し、労働者が安心して面談に行けるようなサポートを事前に行うことも重要です。
ここまで、産業医面談について、法的な観点から説明してきました。では実際に、従業員が産業医面談を拒否した場合、会社側としてどのような対処を取ればよいのでしょうか?ここから詳しく説明していきます。
従業員が面談を拒否した場合の会社側の対処法
ここまで、産業医面談について、面談内容やタイミング、強制力の有無などについて説明してきました。ここからは、従業員が面談を拒否した場合どうしたらよいのだろう?という疑問にお答えしていきます。
例えば、ストレスチェック後の産業医面談などは、従業員からの申し出がある場合に行われますが、ストレスチェックの実施者は高ストレス判定が出た従業員に対して、面接を勧奨することができます。
一方で、先程も説明したとおり、産業医面談の実施自体には法的な強制力はありませんが、万が一、労災が発生した場合には企業側の安全配慮が不足していたと責任を問われる可能性があります。
これらからお分かりの通り、産業医面談は非常にデリケートで、慎重にかつ適切に行われる必要があります。そのため、面談を拒否した場合の対応も慎重さが求められます。以下に、主な対処法を3つ紹介します。
①面談を拒否する理由を確認する
拒否する理由には様々なものが考えられます。例えば、忙しくて面談に行く時間が取れない、産業医面談でどんなことを話せばよいか分からない、人事評価に繋がるのが怖い、などといった理由が挙げられます。
面談対象となっている従業員から可能な限り、産業保健スタッフなどを通して、こうした理由について尋ねることが重要になります。
例えば、面談の時間が取れない等であれば、職場の上司・同僚らと業務を分担することが可能かどうか提案をしたり、産業保健スタッフが産業医と従業員の架け橋となって、日程を調整したり、といったこともできるでしょう。
面談で話すことが分からない、人事評価への影響が怖いといった場合は、産業保健チームが主体となって、産業医面談が気軽に相談できる場であること、人事評価には影響しないこと、守秘義務があることなどを周知できると良いでしょう。
面談を拒否する理由の聞き取りと共に、普段からのこうした工夫などによって産業医面談が効果的に実施されるように環境を整備することも大切です。
②面談によるメリットを伝える
対象となる従業員が面談を拒否する場合、産業医面談を実施することによって従業員が得られるメリットについて伝えることも方法の一つです。
面談の対象となった背景を伝えることと併せて、面談では気軽に何でも相談できることや、産業保健の専門的立場にある産業医から、アドバイスがもらえること、産業医と一緒に解決策を考えられることなど、伝えられると良いでしょう。
③事業者に法的な義務があることを伝える
健康診断後やストレスチェック後の対象者、長時間労働者に対する産業医面談は、法律によって企業側に義務が課せられています。従業員に対して、面談が義務づけられているわけではない点には注意してください。
企業は安全配慮義務の一環として、必要な従業員に対して産業医面談の場を設ける事が求められているため、面談を拒否する従業員に対して、企業側に法律上の義務があって勧めているという点を強調してもよいかもしれません。
ここまで、従業員が産業医面談を拒否した場合の会社側の対処方について説明してきました。では最後に、産業医面談について会社側はどのようなことに注意すれば良いのでしょうか?4点にまとめて説明していきます。
産業医面談について会社側が注意すべきポイント4選
ここからは産業医面談について、会社側が特に注意すべき4つのポイントをお伝えします。
①休職・復職時の対応
休職・復職時面談時には、従業員本人の意思や現在の生活状況を聞き取ること、休職や復職を始める時の対応策についての話し合いがメインとなります。
特に、休職・復職に該当する従業員は、人事評価への影響を気に掛けていると考えられますので、会社側としても細かな配慮が必要になります。
従業員が安心して休職出来るように、会社側から休職中の手当について十分に説明をしたり、復職時も同様に安心して復職ができるように、会社側としても勤務時間の配慮や職場環境の整備などを行うことを表明すると良いでしょう。
②異動の希望があった場合
産業医は面談を通して、就業上、何らかの措置が必要であると判断された場合に会社側に対して指導・助言を行います。では面談時に、従業員本人から異動の申し出があった場合はどのように対応すればよいでしょうか。
企業側としてまずは、産業医から異動の理由を聞くことができるでしょう。異動を申し出ている理由を聞き、職場の環境や労働時間、勤務内容を改善することなど会社側で対応策を考えることができるでしょう。
③残業が負担となっていた場合
こちらも②と同じく、まずは産業医から面談内容について報告を受けます。その結果、面談対象となった、つまり健康診断の結果やストレスチェックの結果に残業が影響していると判断された場合、対応が可能です。
会社側として、現在の勤務時間を確認すると共に、残業や休日出勤などの短縮のために、業務の工夫ができないか、部署内で業務を分担することができないかなど、対応策が考えられるでしょう。
④退職勧告をすべきでない理由
最後に、産業医面談の実施後に、会社側から退職勧告をすべきでない理由について説明します。
まず、その理由として従業員から会社に対する信頼が損なわれてしまうということが挙げられます。以前にも説明をしたように、産業医面談に対して従業員は、人事評価に影響するのではという不安を抱いています。
こうした不安を払拭し、産業医面接を適切に行うことで、企業は従業員の安全に配慮しなければなりませんが、その不安を乗り越えて産業医面談に来てもらうには相当な労力が必要です。
そのため、産業医面談後に退職勧告をしてしまうと、やはり産業医面談は人事評価に影響するんだという誤解を招き、従業員の健康を保持増進するという本来の目的を理解してもらうことから遠退いてしまいます。
また、従業員本人が退職勧告に納得できなかった場合、労働基準監督署から会社側の対応が問われることになりますし、損害賠償の請求に繋がってしまうケースもあるかもしれません。
以上のように、社内での信頼を失うだけでなく、社外に対してもイメージダウンに繋がり兼ねないといった理由からも、産業医面談後に退職勧告をすべきでないことはお分かり頂けたのではないでしょうか。
さて、今回の記事では産業医面談について、その強制力や会社側が注意すべきポイントなどについて詳しく説明してきました。いかがでしたでしょうか?働き方の変化に伴い、従業員の健康の保持増進がより一層注目され、産業医面談も重視されつつあります。
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