産業医の基礎知識

産業医の報酬の相場・目安はどれくらい?契約内容による違いも解説!

産業医の報酬の相場・目安はどれくらい?契約内容による違いも解説!

嘱託産業医・専属産業医によって報酬は違うの?

働く人の健康管理やよりよい職場環境に向けて助言を行う産業医。(詳しくはこちらの記事を参考にしてください)産業医の中には「嘱託産業医」と「専属産業医」があることを知っていますか?
実は、産業医は事業場(企業を始めとする、働く場所のこと)によって、必要な種類の産業医を必要な数だけ配置することが決まっています。その産業医の種類として、「嘱託産業医」と「専属産業医」があるのです。

以下の表をご覧ください。あなたの事業場の規模はどれくらいですか? あてはまる項目について確かめてみてください。

事業場の規模によって必要な産業医の数

嘱託産業医は、非常勤として2ヶ月または1ヶ月に1回以上の頻度で事業場を訪問して業務を行い、その報酬は月額や時給で支払われます。一方、専属産業医は原則は常勤として特定の事業所にのみ属し、その報酬は年収で支払われます。

また、産業医への報酬は事業場が所属する法人との契約によって決まりますが、一般的には「事業場の規模」と「産業医の属性」によって相場が変わってきます。
詳しくは、「事業場の規模(嘱託か専属か)」によるそれぞれの報酬については、嘱託産業医への報酬の相場はこのくらい!または専属産業医への報酬の相場はこのくらい!を、「産業医の探し方」による報酬の違いについては、【産業医の探し方】産業医の人材紹介サービスを利用?医師会に相談?をご覧ください。

嘱託産業医と専属産業医の、事業場による違い、その報酬の違いについて説明してきました。
それでは、実際に読者の皆さんが当てはまる項目について、確認してみてください。

嘱託産業医への報酬の相場はこのくらい!

先ほどの表のように、事業場の規模が50人以上500人未満のとき、または1000人未満で有害業務を行う職場でないときには、嘱託産業医を1名配置する必要があります。

嘱託産業医の主な業務内容は専属産業医とほとんど変わりませんが、嘱託産業医は非常勤になります。そして、一般的には月1回程度事業場を訪問して、業務を行うことになります。非常勤ですから、その報酬は月額または時給で支払われます。
では、嘱託産業医への報酬の相場はいくらくらいなのでしょうか?

地域の医師会を介して産業医を紹介してもらう場合、読者の皆様の事業場の地元の医師会によって相場は変わってきます。また、医師会を介する場合は月額で提示されることが多いようです。
例えば、公益社団法人日本橋医師会により報告されている、その会員の医師への報酬の基準額のヒヤリングによれば、相場は以下のようになっています。

医師会による産業医の報酬額の相場

産業医報酬基準額について(公益社団法人日本橋医師会)より)

一方で、人材会社を介して産業医を委託する場合、報酬は時給で支払われることが一般的です。例えば、産業医ドットコムの調べでは、次のような時給の相場となっています。

産業医ドットコム調べによる産業医の報酬額の相場

また、嘱託産業医は、「ストレスチェック」の業務を企業から委託される場合があります。その場合、契約内容によっては別途ストレスチェックの業務のための費用が加えて支払われることがあります。次の項では、ストレスチェックを嘱託産業医に依頼した場合の報酬の相場を説明します。

嘱託産業医にストレスチェック依頼した場合の費用は?

そもそも「ストレスチェックって何?」と疑問に思う方も多いでしょう。
「ストレスチェック」とは、「ストレスに関する質問票に労働者が回答し、それを集計・分析し、労働者が自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べたり、職場環境の改善に活かしたりするための簡単な検査」です。

ストレスチェックの実施者(ストレスチェックを企画し結果の評価を行う人)は、労働安全衛生法上では必ずしも産業医である必要はなく、医師の他にも保健師、看護師、心理士、歯科医師などが対応できる場合があります。また、ストレスチェック後の医師による面接指導も必ずしも産業医である必要はありません。
しかし、実際のところは、ストレスチェックの実施者や面接指導を行う医師は、産業医がなることが望ましいです。職場環境に熟知した産業医がそれらの業務を担当することで、より効果的な対応ができるからです。
また、事業場であらかじめ選任している産業医ではなく、ストレスチェックを外部機関に依頼する場合にも、事業場であらかじめ選任している産業医を「共同実施者」とすることが厚生労働省により推奨されています。

そして、医師会経由で嘱託産業医にストレスチェックの「実施者」や「共同実施者」になってもらう場合、ストレスチェック業務のための報酬を通常業務の時給や月給に加えて支払いするケースがあるようです。それでは、ストレスチェックの報酬の相場はいくらくらいなのでしょうか?

これも契約によりますが、先程も参考にした産業医報酬基準額について(公益社団法人日本橋医師会)によると、

  • 嘱託産業医にストレスチェックの「実施者」になってもらう場合:20万円程度
  • 嘱託産業医にストレスチェックの「共同実施者」になってもらう場合:10万円程度

が妥当だと考えられるようです。

ここまで、嘱託産業医の報酬、嘱託産業医にストレスチェックを加えて依頼した場合の報酬の説明をしてきました。
次は、常勤として特定の事業所のみに所属する「専属産業医」の報酬の相場についてお伝えしていきます。

専属産業医への報酬の相場はこのくらい!

最初の表にあったように、事業場の人数が1000人以上のとき、または500人以上1000人未満でも有害業務を行う事業場のとき、常勤として特定の事業場のみに所属する「専属産業医」が一名必要でした。働き方としては、研究日として1日~2日程度設定した上でその事業場に1週間のうち3日〜4日ほど勤務するのが一般的です。

専属産業医の報酬は、年収として支払われ、その相場は勤務時間や経験に応じて幅広く変わります。大まかな目安としては、民間病院の勤務医と同じような水準となっており、年間を通じて週1回の勤務で300〜400万円支払われます。
したがって、週3日勤務では900〜1200万、週4日勤務では1200〜1600万、平均的には年収1500万円程度の方が多いようです。

勤務日数については、事業場側の業務内容の要望や、産業医側が大学で研究を行ったり他病院での外来などでの診療技術の向上させたりするための「研究日」の確保との兼ね合いで決まってきます。

さて、ここまで嘱託産業医と専属産業医の報酬の相場について説明してきました。
ここで、「どのようにして、自分の職場に合った産業医を見つけるの?」「産業医の探し方によってメリットやデメリットはあるの?」と気になった方も多いでしょう。
次の項では、産業医の探し方について、詳しくご説明していきます。

【産業医の探し方】産業医の人材紹介サービスを利用?医師会に相談?

産業医の探し方には、産業医の人材紹介会社を介する方法、地域の医師会に依頼して紹介された産業医と直接契約を結ぶ方法、定期健康診断を依頼している運営機関などに依頼する方法、他には事業場の関係者の人脈をたどって産業医を探す方法などがあります。

地域の医師会に相談する方法には、その地域に根ざした医師を見つけられるというメリットがあります。
その一方で、その産業医と事業場で直接契約することになるので、業務内容や報酬などの交渉を事業場自身が行わなくてはならず手間がかかったり、医師会が開業医の組織であることから、衛生委員会参加や巡視を対応してもらえない名義貸しでの契約になる事や、ストレスチェックの実施者費用が別途になる等で報酬が高めについてしまったりすることも多いのが、デメリットです。

そのため、以前は地域の医師会に相談するケースも多かったですが、近年は、産業医の人材紹介会社を介する方法を利用するケースが多くなってきています。

産業医の人材紹介会社を介する方法のデメリットとしては、産業医の紹介料や付随するサービスのサービス料がかかったりすることが考えられます。
その一方で、メリットが以下のようにたくさんあります。

  • 多くの医師が登録している人材紹介会社では、事業場の特徴やニーズに最適な産業医を紹介してもらえること
  • 人材紹介会社が事業場と産業医の間に入って、報酬や業務内容の交渉を任せられること
  • 産業医を選任した後もサポートサービスがあることが多く、仲介によって産業医への要望を伝えやすくなり業務負担が減らせたり、企業の産業保健活動をサポートしてもらえたりすること

たとえば、産業医の人材紹介会社の一つである産業医ドットコムでは、①産業医の紹介と、ストレスチェックの運営を一括で請け負う、②産業医を専門にして診療している質の高い産業医が豊富に登録している、などの強みがあります。
産業医ドットコムにご興味のある方は、ぜひこちらをクリックしてみてください。皆様のご相談をお待ちしております。